夏。

好きな季節は夏。


夏生まれだから。
太陽とひまわりが好きだから。
すべてがキラキラして見えるから。




夏生まれの祖父が亡くなりました。
来週会いに行こうと思っていた矢先、たくさんいる内の孫の1人を待ってはくれなかった。
いつも死に目に会えないから、きっと今後も会えないのだろう。



祖父は改めてすごい人なんだと思い知らされた。
そりゃ、あの一族を纏めていたからにはそうなんだけど、
来る人もすごいし、
お花やお香典もすごいし、
いつ準備したのかお別れVTRが流れて、
やっぱりすごいんだなぁと受付に座りながらのんきに思った。


でも、
スウェットを前後ろ逆に履いて「反対だよ」と言うと「こういうデザインやねん」と意地を張ったり、夜中にもそもそ起きだして「ラーメン食べるやろ?」って自分が食べたいのに孫のせいにしたり、短気ですぐ怒鳴るから素直に言いたいこと言えなかったり、お土産のマロングラッセを1箱全部1人で食べちゃうくらい栗に目がなかったり。

そういう所は知らないんだろうなこの人たちは、なんて思って少し得意気になった。




親戚に医者が多いからか、お骨上げのときに「のどぼとけが綺麗」だの「インプラントが10本ある」だの、口々に言いたいこと言っていた。今日あたり夢枕で怒鳴られるんじゃないかと思う。








涙は出ない。
泣き崩れる親や祖母を目の前に、すこし羨ましいなんて思いながら、冷たい頬に触れ、年齢のわりに豊かな髪を撫で、涙は出さなかった。
ただただ誰よりずっと、もう動かない祖父の近くにずっと座っていただけ。



大好きな夏に、大好きな人が死んで逝きます。
ここ5年くらい、毎年のように。
大好きなはずの夏の匂いが別れを思い出させてやるせない思いが募る。


それでも好きな季節は、夏。
わたしは今日も生きている。

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